山崎が沖田と初めて会った時、あれは沖田がいくつの時だったか。
既に沖田は甘やかされ放題であった。
その時にはもう今日のようなS星の王子的な人格が形成されており、逆らう物は誰もいなかった。
恐ろしいことだ。
周囲の人間は沖田をとにかく猫っ可愛がりで、始めは小さい子相手だから仕方ないよなーなどと呑気に構えていた山崎だった。
ちょっとおかしいなと思い始めたのは、何日か経ってからだ。
土方が辛うじて沖田を怒鳴ったりしているが、あれはダメだと気が付いた。
日常会話と化しており、沖田は怒られていると感じていない。
子どもの悪態と兄貴分の怒声は、普通に会話のキャッチボールだった。
何より土方も、沖田の悪戯や悪態が可愛くてしょうがないのだ。
可愛くて可愛くてどうしようもないぜ!っていうのを垂れ流しにしてるから新参の山崎ごときにすぐ見破られてしまうのだ。
まったくもってダメな土方だった。
そして今に至る。
その時となんら変わらない。
局長も副長も、規律を正しているつもりで沖田だけは例外であることは周知の事実。
三つ子の魂ではないけれど、これはもう、どうしようもない。
どうしようもないけれど、可愛いからいいか。
そう思う自分もすっかりダメになってしまっている。
出会ってそう経たない内に甘やかす側の仲間入りをしてしまった山崎なので、もう二人を非難できる立場にはない。
しかし山崎とて初心を思い出してふとつぶやきたくなる時がある。
アンタら、もう、この子がかわいくてかわいくて、仕方ないんでしょう?
だからってそんなみんなしてダメになって、どうしようっていうんです。
ちょっと、もっとちゃんとしてくださいよ!
口には出さない。
思うだけ。
でもまあ、思うだけでもみんなよりマシなのではないか。
「山崎ィ!」
遠くから自分を呼ぶ声がした。
あれはそう。沖田の声。
「はいはい」
山崎はいそいそと声の元に向かう。
今やっていた仕事などどうでもいいので置いといて。
嬉しげに、歩調を早めて。
歩きながら山崎は、先程の「みんなよりマシ」は取り消すべきかもしれない、と遠慮がちに考えていた。
20071017 itsukiyo
× close