丸いものは可愛い。
今まで付き合ってきた女たちは、丸っこいものを見ると大概「可愛い」と大騒ぎをした。
それこそぬいぐるみや幼児や生き物、置物、なんでもだ。
わからん、とその度思った。
どこがどういうふうに可愛いのか首を捻り、その後「女は可愛いものを見て可愛いという自分こそが一番可愛いと思ってその言葉を発している」という結論に達した。
という訳で、かつて聞かされたその殆どに賛同できかねたものだが、今己の目の前にある丸っこいものに息を呑んでいる自分が居る。
「カワイイ」
信じがたいが、なんか胸が高鳴る。
いいのかそれで。
そんなんでいいのか。
だがしかし可愛いのだ。異常に愛らしい。
いや、違うぞ。
俺は可愛いものを見て可愛いという自分こそが一番可愛いと思っている訳ではない。
俺自身は可愛くもなんともない。断じて。
可愛いのはこれだ。
目の前の、丸い後頭部。
「土方さん」
丸い後頭部がいきなり振り向く。
「え」
「なにじろじろ見てるんですか。気持ち悪い」
あー。振り向いてしまった。
可愛かったのに。後頭部が。
「見てねェよ。アホか。自意識過剰」
「えー。絶対見てた」
「見てねっつーの」
「うっそ」
「いいから前見て歩け」
はやくその後頭部が見たいと思いつつ、総悟を急かして歩く。
そう。俺は総悟の後頭部の丸っこさにときめいていたのであった。
言っておくが、後頭部だから。
確かに総悟の顔は可愛いが、俺は後頭部、あくまで後頭部に。
丸いからだ。きっと。
人類はすべからく丸いものに反応するようにできているのだ。多分。
だから総悟のうしろあたまにこのように。
「土方さん、へんなのー」
ぶつぶつ言って歩く総悟は前方を向いている。
これで思う存分丸いのを堪能できる。
と、思っていたところに。
「やっぱなんか企んでるんじゃねーですか?」
「うわ!」
急に振り向いた総悟の顔が至近距離。
「バカ、近い!」
「土方さんが変だからですぜ」
焦る俺にかまわず、こっちをじっと見ている。
近くで、じっと。
あ、こいつ目もまん丸じゃねーか。
うん、丸い。
ああ。
ヤバイ。
人類はすべからく丸いものに惹かれるようにできているのだ。
だから俺は悪くない。
20071104 itsukiyo
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