ぴよぴよ


 魔が差した。
 目の前の、ぷっくりしたつるつるのそれがあんまり気持ちよさそうだったから。

 そのほっぺを人差し指で、ぎゅっと押す。
「は?」
 びっくりしたような声をあげてこっちを見るおちびさん。
 俺の方を振り向く形になったので、人差し指が余計にぎゅぎゅっと。
「いてーでふ」
 丸い、でっかい瞳のまま訴える。
 そうか。
 痛いよな。
 まずいまずい。
「あ、ああ。すまねー」
 ようやく指をひっこめた。

「なに、今の」
 余程痛かったのか、ほっぺを自分でぺたぺたさわりながら聞いてくる。
「何でもねェ」
「えー?」
 思い切り怪訝な眼差しのおちびさん。
 そりゃ何でもない訳ないわな。
 でも言えるか。
「おれ、痛かった」
 口を尖らせて、傷ついたみたいな顔で言う。
「だから、すまねーって言っただろうが」
「ええー?だって……」
「うるせーな。減るもんじゃねーし、騒ぐな」
「ひ、ひじかたのばかー!!近藤さんに言ってやるー!」
 わざと怒らせるように言ってしまったのは、魔が差した自分への自嘲ゆえなのだが。
 思惑通り、ちびはぷんぷん怒って走り去る。
 ばたばた聞こえる足音も、ちびのものは軽快だ。
 なんていうか、ぱたぱた、に近い。
 ……なんだそれ。今それ関係ねぇから。何考えてんだ自分。
 でもそんな風に聞こえた。

 あ、総悟のほっぺは柔らかかった。 




20071110 itsukiyo


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